Blog【実践編】心理系大学院入試・直前対策!記述問題の「自己採点」で合格力を高める【模範解答&採点基準付き】その2
2026/1/15
【実践編】心理系大学院入試・直前対策!記述問題の「自己採点」で合格力を高める【模範解答&採点基準付き】その2
はじめに
心理系大学院の入試直前期になると、
多くの受験生が「最後に残る壁」として感じるのが、研究立案問題です。
用語説明や理論の整理は一通りできている。
過去問にも目を通し、出題傾向も理解している。
それでもいざ本番形式の問題を前にすると、
「何から書けばいいのか分からない」
「これで“研究”として成立しているのか不安」
という状態に陥りがちです。
研究立案問題で問われているのは、知識量の多さではありません。
また、斬新さや独創性を競う場でもありません。
大学院側が見ているのは、
問題意識を心理学的な問いとして整理できているか
変数・対象・方法の関係を論理的に構成できているか
修士課程で「指導すれば伸びる思考の型」を備えているか
という、ごく基本的でありながら、独学では身につきにくい力です。
今回、そうした研究立案問題に対して、
「評価される答案の骨格」に焦点を当てたオリジナル問題を提示し、
直前期でも再現可能な考え方・書き方を解説していきます。
・どこまで書けば十分なのか
・どこから先が「書きすぎ」なのか
・なぜその構成だと読み手に伝わるのか
模範解答を覚えるための記事ではありません。
どの大学院でも応用できる「思考のフレーム」を確認するための記事です。
直前期だからこそ、迷いを減らし、
「書ける気がしない」から「この型で書けばいい」に切り替える。
そのための最終整理として、読み進めていただければと思います。
オリジナル問題
【研究計画立案記述問題】
あなたは公立小学校のスクールカウンセラーとして勤務しています。友人関係のトラブルを抱えやすい高学年児童(4〜6年生)を対象に、全10回の「ソーシャル・スキル・トレーニング(SST)」をグループ形式で実施することになりました。
問)このSSTプログラムの実践的な効果を定量的に検証し、学会等で発表するための研究計画を立案してください。
論述にあたっては、以下の観点を必ず盛り込むこと。
・研究デザイン(比較群の設定や介入のタイミングなど)
・効果測定の指標と収集方法(誰から、どのようなデータを集めるか。多角的な視点を含めること)
・分析手法(どのような統計的手法を用いて結論を導くか)
・学校現場特有の剰余変数とその統制
・倫理的配慮(特に対象が小学生であること、学校という場であることを踏まえて)
① 採点基準(ここが見られています)
採点者は、以下の4つのポイントが押さえられているかをチェックします。
1.「多面的な評価(Multi-informant Assessment)」ができているか
最重要ポイント:小学生の自己評価(「僕はできている」という主観)は、実際の行動と一致しないことが多々あります。
本人(自評)だけでなく、担任教師(他評)や保護者からの評価を組み合わせているかが合否を分けます。
2. 学校現場のリアリティへの配慮
「ランダムに抽出する」と書くのは簡単ですが、学校現場でクラスを無視して子どもを抽出するのは困難です。
「希望者を募る」「管理職や担任と調整する」といった、現場の制約を理解した記述があるか。
3. 統計的分析の適切さ
「2要因混合計画の分散分析」というキーワードを正しく使い、交互作用について言及できているか。
4. 倫理的配慮(スティグマとアセント)
特定の児童を集めることで「あの子たちは問題児だ」というレッテル(スティグマ)が貼られないよう配慮しているか。
親の同意だけでなく、児童本人への説明と同意(アセント)があるか。
② 解説:学校臨床研究のポイント
この問題の最大の罠は、「実験室ではなく、学校という生活の場で研究を行う」という点です。
1. デザイン:準実験か、RCTか
理想はRCT(ランダム化比較試験)ですが、学校では「A君は今すぐやる、B君は待機」とランダムに分けるのが難しい場合があります(クラス単位の活動などがあるため)。
模範解答では、科学性を重視して「ウェイティングリスト法を用いたRCT」を採用しますが、現実的には「希望者順」などの準実験デザインになることも多いです。試験では「理想(RCT)」を書きつつ、「実施上の制約」に触れると評価が高いです。
2. 指標:何で測るか
SSTの効果は「知っている(知識)」と「できる(行動)」のギャップにあります。
質問紙(尺度):知識や態度の変容。
行動観察(担任評価):休み時間のトラブル回数、授業中の発言など、実際の行動変容。
SDQ(Strengths and Difficulties Questionnaire):世界的に使われる子どもの行動評価尺度。親や教師が評価します。これを知っていると強いです。
3. 分析:交互作用(Interaction)
介入群だけが、実施後にググっと数値が良くなる(待機群は変わらない)。この「群」と「時期」の組み合わせによる効果を統計的に証明するのが「交互作用」です。
③ 模範解答
【研究計画書:高学年児童を対象としたSSTの効果検証】
1. 研究デザイン
本研究では、学校現場におけるSSTの実践効果を検証するため、待機群統制デザインを用いたランダム化比較試験(RCT)を採用する。
対象となる4〜6年生の児童(および保護者)から参加の同意が得られた者を、ランダムに「介入群」と「待機群」に割り付ける。介入群には週1回45分、全10回のSSTプログラムを実施する。待機群には、同時期には通常の学校生活を送らせ、データ収集完了後に同様のプログラムを提供する(ウェイティングリスト法)。
2. 効果測定の指標とデータ収集
子どもの行動変容を客観的かつ多角的に捉えるため、マルチ・インフォーマント(多情報源)による評価を行う。測定時期は、Pre(開始前)、Post(終了直後)、Follow-up(3ヶ月後)の3時点とする。
①児童本人(自己評価):
「社会的スキル尺度(KiSS-18等)」を用い、スキル使用の自信や頻度を測定する。
「学校適応感尺度」を用い、心理的な適応状態を測定する。
②担任教師(他者評価):
学校生活における具体的な行動変容(例:トラブルの頻度、授業中の発表、他児への援助行動)を評価する。
SDQ(子どもの強さと困難さアンケート)の教師用を用いる。
③保護者(他者評価):
家庭での様子や変化について、SDQ親用を用いて評価する。
3. 分析方法
収集したデータについて、独立変数を「群(介入・待機)」と「時期(Pre・Post)」、従属変数を各尺度の得点とする2要因混合計画の分散分析(Two-way mixed ANOVA)を行う。 ここで、「群」と「時期」の交互作用(Interaction)が有意であり、かつ多重比較において介入群のPost得点が待機群よりも有意に改善している場合、本プログラムに効果があったと結論づける。
4. 剰余変数の統制
学校現場特有の剰余変数として、①担任教師の指導力やクラスの雰囲気の違い(クラス効果)、②行事などの学校スケジュールの影響が考えられる。
これに対し、対象者を複数のクラスから抽出してランダムに割り付けることで①の影響を相殺する。また、両群の測定時期を完全に一致させることで②の影響を統制する。
5. 倫理的配慮
学校臨床における倫理として、以下の点に配慮する。
インフォームド・コンセントとアセント:保護者への文書説明と同意に加え、児童本人にも分かりやすい言葉で説明し、納得(アセント)を得る。途中辞退が可能であることも保証する。
スティグマ(烙印)の回避:SSTを「問題のある子の指導」としてではなく、「コミュニケーション・スキルアップ・クラブ」等の肯定的名称で実施し、参加児童が周囲から特別視されないよう、実施場所や時間を配慮する。
待機群への利益提供:研究終了後、待機群にも必ずプログラムを提供し、教育的機会の不平等を解消する。
まとめ
いかがでしたでしょうか。 この「型」は、
デザイン(RCT/ウェイティングリスト)
指標(誰が、何で測るか)
分析(分散分析・交互作用)
倫理(同意・スティグマ・不利益解消)
の4本柱で構成されています。これさえ押さえておけば、どのような対象(幼児、高齢者、障害者)であっても、内容を入れ替えるだけで合格答案が作れます。
これで「研究計画」系の問題に対する恐怖心はかなり薄れたのではないでしょうか?
その他の過去問対策
おわりに
心理系大学院入試の直前対策において、記述問題への取り組み方は合否を左右する重要なポイントです。
特に、研究立案を含む記述問題では、知識量や文章量よりも、採点基準を意識した自己採点ができているかが大きな差につながります。
本記事では、模範解答と採点基準をもとに、心理系大学院入試で評価されやすい記述答案の考え方を整理してきました。
自己採点を通して、自分の答案を客観的に見直すことで、
・論点がずれていないか
・研究として成立しているか
・加点される要素が書けているか
を冷静に確認することができます。
直前期の学習では、新しい知識を増やすよりも、これまで学んできた内容を「合格点の答案」に変換できるかが重要です。
記述問題も、研究立案問題も、型を意識して落ち着いて記述すれば、大きく崩れることはありません。
なお、心理系大学院受験を目指す中で、
「記述問題の自己採点に自信が持てない」
「採点基準の読み取りが合っているか不安」
「研究立案問題を第三者の視点で確認してほしい」
と感じている方も少なくありません。
ココロアップアカデミーでは、心理系大学院入試(臨床心理士・公認心理師対応課程)を目指す受験生を対象に、
記述問題・研究立案問題の最終確認や個別相談など、直前期においてもサポートも行っています。
心理系大学院入試の直前期は、不安になりやすい時期でもありますが、
同時に、最も得点力を伸ばしやすい時期でもあります。
本記事が、記述問題対策と自己採点の精度を高める一助となれば幸いです。
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