2025/10/29
心理系大学院受験 過去問対策 心理学研究法 記述問題その1
心理学大学院の入試問題、特に筆記試験対策に悩んでいませんか?「一体どんな問題が出るんだろう…」「研究計画ってどうやって立てればいいの?」そんな不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
今回は、心理学大学院入試問題の中でも、多くの受験生がつまずきやすい「研究法・実験計画問題」について、実際の過去問を使って徹底解説します!取り上げるのは、2023年度に昭和女子大学大学院(臨床心理学講座)で出題された問題を改編して紹介です。
この問題は、単なる知識だけでなく、仮説を検証するための論理的な思考力が問われる良問です。この記事を読めば、
大学院の筆記試験でどのような思考プロセスが求められるのか
合格レベルの研究計画の立て方
適切な統計分析手法の選び方
といった、独学ではなかなか掴みづらいポイントが具体的に理解できるはずです。心理学大学院を目指すすべての方にとって、必ず役立つ内容となっています。さあ、一緒に合格への一歩を踏み出しましょう!
【過去問題】
大学の講義授業を教室で対面受講する場合と、授業の中継映像を見てオンライン受講する場合とで、授業内容の理解度に違いがあるかを検討するために、「外向性の高い学生ではオンラインより対面受講の方が授業内容の理解度が高いが、外向性の低い学生では対面よりオンライン受講の方が授業内容の理解度が高い。」という仮説を設定し、実験法で検証を行うことにした。
設問1 この仮説を実験法で検証するための研究計画を立案しなさい。
設問2 1 で得られたデータについて、どのような統計分析を行うか、またどのような分析結果が得られれば仮説が支持されるかを説明しなさい。(次のブログでご紹介!!)
これらの問題の意図(ココロアップ講師の分析)
これら問題は、単に心理学の知識を問うものではありません。
受験生の皆さんが、具体的な研究仮説に基づいて、科学的な心理学研究を論理的にデザインし、実行し、そして結果を解釈する能力を持っているかを確認することを目的としています。
特に、複数の要因が絡み合う複雑な現象をどのように捉え、分析するかという、臨床家としても研究者としても不可欠な多角的視点を評価します。
鍵となるのは各統計用語の概念を正しく理解し、研究計画と分析に落とし込めるかという点です。
【解説・採点ポイント】
この採点基準は、一言でいうと「科学的に信頼できる、しっかりとした実験を計画できますか?」という能力を見ているものです。それでは、各ポイントを詳しく見ていきましょう!
1. 変数の定義:研究法(実験)の「材料」と「できあがり」を明確にさせる
実験を料理に例えるなら、「変数」は「材料」と「できあがり」のことです。これが曖昧だと、何を作っているのか分からなくなってしまいますよね。
独立変数(原因): これが「材料」です。実験者が「これを変えたらどうなるかな?」と意図的に変える条件のことです。今回の問題では、「授業のやり方(対面かオンラインか)」と「学生の性格(外向的か内向的か)」の2つが独立変数になります。
従属変数(結果): これが「できあがり」です。「材料」を変えたことで、どんな変化が起きたかを測定するものです。今回の問題では「授業の理解度」がこれにあたります。
操作的定義: 「じゃあ『理解度』ってどうやって測るの?」という具体的な測定方法を決めることです。「理解度が高い」というフワッとした状態を、「授業後のテストの点数が高い」という誰が見ても分かる具体的な数値に置き換えることが重要です。これがしっかりしていないと、評価が人によってブレてしまいます。
【ここがポイント!】 「授業形式」「外向性」「理解度」という言葉だけでなく、「具体的にどうやって操作し、どうやって測定するのか」までハッキリ書けているかが評価されます。
2. 実験計画:実験の「設計図」を正しく描く
次に、実験全体の「設計図」をきちんと描けているかを見ます。
2要因被験者間計画: これは設計図の名前です。「2つの原因(要因)を組み合わせて、グループ(被験者)ごとに比較する計画ですよ」という意味です。専門用語ですが、これ一言で「この人は実験計画の基本が分かっているな」と伝わります。
ランダム割り付け(無作為割り付け): これが超重要ポイントです! 参加者を各グループに分けるとき、「くじ引き」のように公平に分けるということです。なぜなら、「もともと対面授業が得意な人ばかりが対面グループに入ってしまった」というような偏りを防ぐためです。この偏りが起きると、「対面授業が良かった」のではなく「もともと得意な人が集まっただけ」という可能性が残ってしまい、実験の意味がなくなってしまいます。
【ここが採点ポイント!】 「ランダムに(無作為に)割り付けます」という一文があるだけで、実験の信頼性がグッと高まります。これは実験法の基本中の基本なので、絶対に外せないポイントです。
3. 手続きの具体性:誰でも同じ実験ができる「方法」を書く
良い方法は、誰が読んでも同じ料理を作れるレシピように、手順が細かく書かれていますよね。実験計画も同じです。
追試可能性: 科学の基本は「再現性」、つまり「他の人が同じ方法でやったら、同じ結果になること」です。そのためには、「参加者を〇〇大学の学生から募集し、最初に性格検査を受けてもらい、次に…」というように、第三者が同じ実験を再現できるくらい詳しく手順を書く必要があります。
剰余変数(余計な影響)の統制: 「授業形式」以外の余計な影響が結果に混ざらないように、条件を揃えることです。
例えば、
・授業の時間や内容は全グループ同じにする
・テストの難易度も同じにする
講義をする先生も同じ人にする といった配慮が重要です。
これをしないと、「オンライン授業のグループの方が点数が良かったのは、実はテストが簡単だったからかも…?」といった別の可能性が生まれてしまいます。
【ここが採点ポイント!】 実験の流れが具体的で、かつ「結果に影響しそうな他の要因」をちゃんとコントロールしようとしている姿勢が見られるかが評価されます。
4. 倫理的配慮:参加者への「思いやり」を忘れない
特に人を対象とする臨床心理学の研究では、参加者の人権や安全を守ることが何よりも大切です。
インフォームド・コンセント: 参加してくれる人に「この実験はこういう目的で、こんなことをします。いつでもやめることができますよ。個人情報はしっかり守ります」と事前にきちんと説明し、納得した上で同意(コンセント)をもらうことです。
デブリーフィング: 実験が終わった後に、「実は、本当の目的はこうでした」とネタばらしをして、参加者の疑問や不安に答えることです。
【ここが採点ポイント!】 他と比べて比重は低いですが、この視点が抜けていると「研究者・臨床家としての基本姿勢が身についていない」と判断されかねません。必ず言及しておきたい大切な項目です。
【模範解答】
解説・採点ポイントを踏まえて、模範解答を紹介します。丸覚えするのではなく、研究法の手順、重要な事柄を一つずつ理解して覚えてくださいね。
【設問1 この仮説を実験法で検証するための研究計画を立案しなさい。】
【目的】 本研究は、授業形式(対面/オンライン)と学生の性格特性(外向性)が、授業内容の理解度に与える影響について、両者の交互作用を検討することを目的とする。
【計画】 要因計画法を用い、授業形式(対面条件/オンライン条件)を被験者間要因1、外向性(高群/低群)を被験者間要因2とする、2要因被験者間計画を立てる。
【参加者】 〇〇大学の学部生100名を募集する。参加者には、実験の概要を説明し、自由意思による参加の同意を得る。
【独立変数】
授業形式(要因1):
対面条件: 指定された教室で、教員が対面形式で行う約40分間の模擬講義を受講する群。
オンライン条件: 自宅等で、対面条件と同一内容の講義を録画した映像を視聴する群。
外向性(要因2):
事前に、信頼性と妥当性が確認されている性格検査(例:Big Five尺度の外向性因子、またはMPIの外向性尺度)を実施する。
得点の中央値(あるいは上位30%と下位30%など)を基準に、参加者を外向性高群と外向性低群に分類する。
【従属変数】
授業内容の理解度:
模擬講義の内容(専門的だが事前知識が不要なテーマを選定)に関する、客観的に採点可能な小テスト(例:10点満点の多肢選択式問題)を作成する。講義終了直後にこのテストを実施し、その得点を授業内容の理解度の指標とする。
【手続き】
募集した参加者全員に性格検査を実施し、外向性の高群と低群を特定する。
各群(高群・低群)の参加者を、ランダム(無作為)に対面条件とオンライン条件のいずれかに割り付ける。これにより、最終的に4つの群(①外向性高・対面、②外向性高・オンライン、③外向性低・対面、④外向性低・オンライン)が形成される。
各条件の参加者は、指定された日時に模擬講義を受講する。講義時間、内容、資料は全条件で統制する。
講義終了後、速やかに理解度テストを実施し、データを回収する。
実験終了後、参加者には実験の真の目的を説明し(デブリーフィング)、謝礼を支払う。
【倫理的配慮】 参加者には事前に研究目的、手続き、個人情報の保護、いつでも参加を中断できる権利について十分に説明し、書面にてインフォームド・コンセントを得る。
おわりに:研究計画問題は、論理的思考力を示す最大のチャンス
今回は、実際の心理学大学院入試問題を題材に、研究法問題・実験計画問題の解き方と採点ポイントを詳しく解説しました。いかがでしたでしょうか。
この記事で見てきたように、臨床心理学研究法の問題は、単に専門用語を知っているかを問うものではありません。「仮説をいかに科学的かつ論理的に検証できるか」という、研究者としての基礎体力、そして臨床家としての多角的な視点を示す絶好の機会なのです。
とはいえ、「独立変数・従属変数」のような概念を答案に落とし込んだり、剰余変数を考慮した手続きを具体的に記述したりするのは、独学での大学院筆記試験対策では非常に難しい部分かもしれません。
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【この記事の執筆者】 伊藤 之彦(臨床心理士 / 公認心理師)
ココロアップアカデミー講師。専門は心理英語・心理統計学・研究計画書・過去問対策。臨床経験を活かし、難解な科目を初学者にもわかりやすく指導。これまで数多くの生徒を第一志望校合格へ導く。




