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早稲田大学大学院(臨床心理)の出題傾向と対策

Blog早稲田大学大学院(臨床心理)の出題傾向と対策

2026/7/9

早稲田大学大学院(臨床心理)の出題傾向と対策

早稲田大学 大学院人間科学研究科 人間科学専攻 臨床心理学研究領域(修士課程2年制)の一般入試は、1次選考(書類審査)と、2次選考(英語試験・専門一次試験・専門二次試験・面接試験)という流れで行われます。

そして専門試験の最大の特徴は、「データを読み解く力(研究法・統計リテラシー)」と「認知行動療法(CBT)にもとづく事例理解」が一貫して問われることです。特に、事例を機能的アセスメント(機能分析)の視点から捉えて支援計画を立てさせる問題は、2024〜2026年度の3年連続で出題されています。

本記事では、2024〜2026年度の出題を分析し、試験の全体像から科目別の対策、研究計画書・面接の準備までを解説します。

早稲田大学大学院 臨床心理学研究領域の入試の全体像

選考の流れ

選考は2段階です。まず1次選考として書類審査(研究計画書・推薦状等)が行われ、その通過者だけが2次選考に進みます。2次選考は1日で実施され、英語試験(60分)、専門一次試験(45分)、専門二次試験(45分)、面接試験(1人15分程度)が課されます。会場は所沢キャンパスです。

直近の実績では、出願が7月上旬〜中旬、1次選考の結果発表が9月中旬、2次選考が10月上旬、最終発表が10月下旬というスケジュールで進んでいます。夏の時点で研究計画書が完成している必要があり、準備は春から逆算して進めることが大切です。

2026年度からの試験形式の変更

2026年度入試から、専門科目の形式が変わりました。

区分

2025年度まで

2026年度以降

専門科目(1)

筆記「共通問題」45分

専門一次試験(筆記45分・全11研究領域共通)

専門科目(2)

筆記「選択問題」45分

専門二次試験(臨床心理学研究領域は筆記45分)

形式変更といっても内容が一新されたわけではありません。大学側は、専門一次試験は旧「共通問題」を、専門二次試験(臨床心理の筆記)は旧「選択問題」を参考にするよう公式に案内しています。つまり、旧形式の過去問分析は新形式でもそのまま有効です。実際、2026年度の出題も従来の路線を引き継いだものでした。

なお、2026年度から研究領域が8領域から11領域に再編されています。過去問を閲覧する際は、旧領域との対応関係に注意してください。

英語試験の免除制度

TOEFL iBT 83点以上、またはTOEIC L&R+S&W(S&Wスコアを2.5倍換算)の合算1700点以上のスコアがあれば、英語試験が免除されます。自宅受験型のスコアは利用できず、有効期限は入学日から遡って2年以内です。細かい適用条件(スコア取得時期による基準の違い等)があるため、最新の入学試験要項で必ず確認してください。

専門一次試験の出題傾向:データリテラシーと短字数論述

専門一次試験(旧・共通問題)は全研究領域共通の筆記試験で、心理学の知識そのものよりも、公的データ・図表を正確に読み取り、根拠を示しながら短い字数で論じる力が問われます。

3年分の出題テーマを概観すると、次のようになります。

年度

大テーマ

問われた力

2024年度

身体的・心理的回復

散布図・相関表の読み取り、相関と因果の区別、データの限界の指摘

2025年度

プラスチックごみ問題

統計表・世論調査の読み取り、図表を引用した論述、自分の専門分野の視点

2026年度

脱炭素社会/子どものウェルビーイング/文化に固有の感情語

世論調査・国際比較データの読み取り、事実→仮説→検証データの区別、研究計画の立案

2026年度は3つの設問で構成され、世論調査の年代別データから特徴を読み取って対策を提案する問題、子どもの生活満足度や自殺率の国際比較グラフから「事実として読み取れること」「自分の仮説」「仮説検証に必要なデータ」を段階的に書き分けさせる問題、そして文化に固有の感情を表す言葉を学術的に理解するための実験・調査計画を200〜300字で立案させる問題が出題されました。字数は設問ごとに80〜300字程度と短く、簡潔にまとめる力が求められます。

3年間で一貫しているのは、「データから言えること」と「言えないこと」を峻別させる姿勢です。相関と因果の区別、サンプルや調査方法の限界、追加で必要な情報といった研究法の基本的な考え方が、毎年形を変えて問われています。さらに2026年度では、読み取りにとどまらず自分で研究をデザインする力まで踏み込んで問われるようになりました。これは大学院入試としては自然な流れであり、研究計画書の作成準備とも直結する変化といえます。

専門二次試験(臨床心理学)の出題傾向:機能的アセスメントが鍵

臨床心理学研究領域の専門二次試験(旧・選択問題)は45分の筆記試験で、出題された問題はすべて解答する形式です。2024〜2026年度は、いずれも「研究法パート」と「事例パート」の2部構成で出題されています。

研究法パート:心理療法の効果検証が軸

年度

出題内容

2024年度

心理尺度の信頼性・妥当性の種類、尺度水準の説明

2025年度

RCT・コホート研究・ケーススタディを、うつ病へのCBT介入研究を想定して説明

2026年度

効果検証における事後測定のみと追跡調査(フォローアップ)の解釈の違い、追跡調査実施の留意点

2026年度は、心理療法の効果の持続性という視点に加えて、追跡調査で生じうるドロップアウトによるサンプルバイアスや測定の影響、倫理的配慮まで論じることが評価のポイントとされました。尺度の基礎→研究デザインの種類→効果検証の方法論と、年々テーマは変わりつつも、「CBTのエビデンスをどう作り、どう評価するか」という軸は共通しています。

事例パート:機能的アセスメント+CBTの支援計画が3年連続

年度

事例

求められた解答

2024年度

うつ病で休職中の30代男性

症状を維持する行動の機能的アセスメント、行動活性化による支援計画

2025年度

パニック発作から乗り物回避が拡大した30代女性

機能的アセスメントを踏まえたCBT的介入、協同的実証主義への言及

2026年度

社交場面の回避が拡大した20代男性会社員

「回避」の用語を用いた症状維持要因のアセスメント、CBTにもとづく支援計画

疾患はうつ→パニック症→社交不安症とローテーションしていますが、問われている枠組みは毎年同じです。すなわち、回避などの行動がどのような機能を果たして症状を維持・悪化させているかを機能分析の視点から説明し、それを踏まえた具体的な支援計画を立てるという構造です。

解答の評価ポイントとしては、エクスポージャー・認知的アプローチ・行動活性化・マインドフルネスといった具体的な技法を挙げられること、そしてCBTの治療関係の概念である協同的実証主義(共同的経験主義)に触れられることが、2年連続で示されています。CBTを「用語の暗記」ではなく、事例に適用できるレベルで理解しておくことが合否を分けます。

2026年度の新しい動き:公的統計×公認心理師の業務

2026年度は、厚生労働省の精神疾患患者数に関する統計グラフを読み取り、公認心理師の4つの業務(心理的アセスメント、対象者への支援、関係者への支援・多職種連携、心の健康に関する教育・情報提供)と照らし合わせて心理学的支援を立案させる問題も出題されました。

専門一次試験で問われてきたデータリテラシーが専門二次にも入り込み、さらに公認心理師制度の理解と組み合わされた形です。精神保健医療福祉の現状(外来患者の増加、認知症の割合の増加、入院患者の減少といった動向)への基礎的な理解も準備しておきたいところです。

分野別の対策

研究法・統計:相関と因果、効果検証の方法論を自分の言葉で

専門一次・専門二次の両方を貫くのが研究法です。信頼性と妥当性、尺度水準、RCTやコホート研究などの研究デザイン、フォローアップ測定とバイアス、といったテーマを、定義の暗記ではなく「具体的な研究例を想定して説明できる」水準まで仕上げてください。過去問の設問形式(〜を想定して具体的に説明せよ)がそのまま良い練習課題になります。

CBTの理論と技法:機能分析を事例に適用する練習

最頻出の機能的アセスメントは、行動の先行事象→行動→結果という随伴性の枠組みで、回避行動が短期的には苦痛を減らしつつ長期的には症状を維持するメカニズムを説明できるようにしておきます。そのうえで、うつ・パニック症・社交不安症をはじめとする主要疾患のCBTモデルと代表的技法(行動活性化、エクスポージャー、認知再構成、マインドフルネスなど)、協同的実証主義などの治療関係の概念まで押さえてください。

事例問題の答案作成:アセスメント→支援計画の型を作る

45分で研究法パートと事例パートの両方に答える必要があるため、書く速度と構成力が重要です。「症状の維持メカニズムの説明→介入方針→具体的技法→留意点」という型を決め、過去問や想定事例で繰り返し書く練習をしておくと、当日も安定して解答できます。

データリテラシー:図表を引用して論じる訓練

専門一次対策としては、官公庁の白書や世論調査など公的データの図表を読み、「読み取れる事実」「解釈・仮説」「言えないこと・追加で必要な情報」を分けて短い字数で書く練習が効果的です。図表の数値を引用しながら論じることを求める設問が続いている点も意識してください。

早稲田大学大学院の英語試験:形式は固定、対策は立てやすい

英語試験(60分)は、2024〜2026年度の3年間、長文の和訳1題+英語での意見記述1題という形式で完全に固定されています。

和訳は心理学やメンタルヘルスに関連する時事的な英文が出題される傾向があります(出典の一部は著作権の関係で大学からも非公開)。意見記述は、マスク着用、オンラインショッピングと実店舗、授業のノートの取り方(紙かデジタルか)といった身近なテーマについて、自分の考えを英語で述べるものです。

高度な英作文技術よりも、平易で正確な英語で理由を挙げて意見を組み立てる力が問われています。心理学系の英文記事を日常的に読んで和訳する練習と、身近なテーマについて15〜20分で意見をまとめて書く練習を並行して進めてください。TOEFL・TOEICのスコアによる免除制度の利用も、専門科目に集中するための有力な選択肢です。

研究計画書と面接の対策

早稲田の臨床心理学研究領域では、出願段階の書類審査が1次選考として独立しており、研究計画書の完成度がそのまま合否に直結します。

研究計画書はA4で表紙を除き3枚以内(日本語・11ポイント程度)とされ、志望動機、研究課題、自学の内容、入学後の研究予定、これまでの研究活動(卒業論文等)を含め、引用の出典を明記する必要があります。

分量の制約が厳しいため、先行研究の整理から研究課題への絞り込みを、限られた紙幅で論理的に示す構成力が問われます。修士論文の評価基準として、問題設定の明確さ、先行研究のレビュー、方法、結果、考察、全体の構成と引用の明示、独自性といった観点が公表されており、研究計画書もこの観点を意識して書くことが有効です。

また、臨床心理学研究領域への出願には希望指導教員の説明会への出席が必要とされ、出願前に教員へコンタクトを取ることが研究科から強く推奨されています。研究室との適合性は書類・面接の両方で見られるため、早い段階で希望教員の研究テーマと自分の計画の接点を明確にしておきましょう。

面接は1人15分程度と短く、研究計画の内容を簡潔に説明し、質問に的確に答える準備が中心になります。

早稲田の臨床心理受験、独学での対策が難しい理由

ここまで見てきたとおり、早稲田の専門試験は「知識を書かせる」試験ではなく、機能分析による事例の定式化、効果検証の方法論、データの限界の指摘といった「考え方を運用させる」試験です。

この種の論述は、自分では書けているつもりでも、評価される答案になっているかを独学で判断するのが非常に難しい領域です。

たとえば事例問題では、疾患名や技法名を並べるだけの答案と、回避の機能を随伴性のことばで説明したうえで技法選択の根拠まで示した答案とでは、評価が大きく分かれます。短字数の論述も、字数内に要素を過不足なく収める訓練には客観的なフィードバックが欠かせません。

ココロアップアカデミーでは、早稲田の出題形式に合わせた答案添削を通じて、機能的アセスメントの書き方、研究法の論述、英語の和訳・意見記述までを個別に指導しています。研究計画書の構成や教員コンタクトの準備も含め、無料個別相談でお気軽にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 早稲田大学大学院(臨床心理)の過去問は入手できますか?

A. 大学の公式サイトで入試問題と出題意図・解答のポイントが公開されています。2026年度から形式が変わりましたが、大学は専門一次試験について旧「共通問題」を、専門二次試験(臨床心理の筆記)について旧「選択問題」を参考にするよう案内しており、旧形式の過去問も対策に有効です。2024年以前のものはココロアップアカデミーでも保存しています。

Q2. 英語試験の免除制度はありますか?

A. あります。TOEFL iBT 83点以上、またはTOEIC L&R+S&W(S&W×2.5換算)合算1700点以上が目安です。自宅受験型スコアは不可、有効期限は入学日から遡り2年以内です。適用条件の詳細は最新の入学試験要項で確認してください。

Q3. 出願前に必ずやっておくべきことはありますか?

A. 臨床心理学研究領域では希望指導教員の説明会への出席が出願の要件とされており、出願前の教員コンタクトも研究科から強く推奨されています。推薦状(厳封)も必要なため、依頼の時間を見込んで早めに準備してください。

Q4. 臨床心理士と公認心理師の両方を目指せますか?

A. 目指せます。早稲田大学大学院人間科学研究科は臨床心理士第一種指定大学院であり、公認心理師のカリキュラムにも対応しています。ただし公認心理師については臨床心理学研究領域の特定の研究指導を受ける必要があるため、履修要件を募集要項等で確認してください。

Q5. 学費はどのくらいかかりますか?

A. 臨床心理学研究領域の初年度納入額は合計約130万円(登録料30万円+授業料91万円+実験演習料9万円+諸会費、2027年度予定)が目安です。臨床心理は実験演習料が他領域より高く、別途実習費がかかる可能性もあります。最新の金額は募集要項で確認してください。

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この記事の著者

伊藤之彦(臨床心理士/公認心理師)

心理学大学院予備校「ココロアップアカデミー」にて、心理系大学院の受験指導(専門科目・研究計画書・面接)を行う。所属学会:日本心理臨床学会、日本認知・行動療法学会、日本マインドフルネス学会。


※本記事では著作権保護の観点から、入試問題の原文は掲載していません。出題テーマ・形式を独自に要約して紹介しています。 ※試験の構成・科目・時間等は年度により変更される可能性があります。受験の際は必ず最新の入学試験要項をご確認ください。