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ノンパラメトリック検定の種類|U検定・Dunn検定の使い分けを解説

Blogノンパラメトリック検定の種類|U検定・Dunn検定の使い分けを解説

2025/9/13

ノンパラメトリック検定の種類|U検定・Dunn検定の使い分けを解説

 心理系大学院の受験では、「心理統計学」の理解が合否を左右します。特に、臨床心理士や公認心理師の指定大学院を目指す人にとって、統計の基礎を押さえておくことは避けて通れません。

多くの受験生は「t検定」や「分散分析」といったパラメトリック検定に重点を置きますが、入試問題や研究計画書で意外に問われやすいのが ノンパラメトリック検定 です。

 ノンパラメトリック検定は、データが正規分布に従わない場合やサンプル数が少ない場合に有効で、心理学研究の現場でも広く使われています。「ちょっと難しそう…」と感じるかもしれませんが、仕組みを理解すればむしろ“使いやすい武器”になります。

 今回、心理系大学院受験で必ず役立つノンパラメトリック検定の基本を、わかりやすく解説します。試験対策だけでなく、今後の研究や実践にもつながる知識としてぜひ身につけてください。


第1部:分布を仮定しない検定—ノンパラメトリック検定

1-1: ノンパラメトリック検定の基礎

 統計的仮説検定には、大きく分けてパラメトリック検定ノンパラメトリック検定の2種類があります。

t検定や分散分析(ANOVA)に代表されるパラメトリック検定は、分析対象のデータが特定の確率分布(多くは正規分布)に従うことを前提とします。

この前提を満たす場合、パラメトリック検定は非常に高い検出力(真の効果を正しく検出する力)を発揮します 。 

しかし、心理学の研究で扱うデータは、必ずしもこの前提を満たすとは限りません。このような場合に活躍するのがノンパラメトリック検定です(両者の違いは#5 「相関係数:変数間の関係性を探る」でも紹介)。

ノンパラメトリック検定とは?

 ノンパラメトリック検定とは、母集団の分布について特定の仮定(特に正規性の仮定)を置かずに行うことができる検定手法群です 。主に、以下のような状況で用いられます。  

  1. データが名義尺度や順序尺度の場合:パラメトリック検定は基本的に間隔尺度以上のデータを要求するため、カテゴリカルデータや順位データにはノンパラメトリック検定が適しています 。  

  2. データが間隔・比率尺度だが、パラメトリック検定の前提条件を満たさない場合:サンプルサイズが小さい、データに外れ値が含まれている、分布が正規分布から大きく歪んでいる、といった場合には、パラメトリック検定の結果は信頼できなくなります。このような状況では、ノンパラメトリック検定の方がより適切で、信頼性の高い結果をもたらします。

「前提がない」わけではない

 ノンパラメトリック検定は「分布を仮定しない(distribution-free)」と訳されることがありますが、これは「いかなる前提も必要としない」という意味ではありません。

これは多くの初学者が陥りやすい誤解です。

個々のノンパラメトリック検定には、それぞれ固有の前提条件が存在します。

例えば、後述するマン・ホイットニーのU検定は、比較する2群の分布の「形状」が類似していることを仮定します 。

この前提が満たされない場合、検定結果の解釈が困難になったり、誤った結論を導いたりする危険性があります。  

パワーと中央値

 パラメトリック検定の前提条件が完全に満たされている理想的な状況では、ノンパラメトリック検定の検出力はパラメトリック検定に比べてわずかに劣ります。

しかし、前提条件が満たされない現実のデータに対しては、ノンパラメトリック検定の方がかえって高い検出力を発揮することがあります 。  

 また、多くのノンパラメトリック検定は、平均値ではなく中央値(メディアン)に基づいて計算を行います 。

中央値は外れ値の影響を受けにくいため、データに極端な値が含まれている場合でも、安定した結果を得やすいという利点があります。  

※ ノンパラメトリック検定の相関係数(順位相関係数)は、「#5 「相関係数:変数間の関係性を探る」で紹介。

1-2: カテゴリカルデータの分析:カイ二乗検定

 カイ二乗検定は、カテゴリカルデータ(名義尺度)の分析に用いられる、最も代表的なノンパラメトリック検定です。

その中心的なロジックは、「観測度数(実際に観測されたデータ数)」と「期待度数(ある仮説のもとで期待されるデータ数)」のズレを評価することにあります 。

このズレが偶然の範囲を超えて大きい場合に、「統計的に有意な差がある」と判断します。カイ二乗検定には、主に2つの種類があります。  

適合度の検定

 適合度の検定(Goodness-of-Fit Test)は、1つのカテゴリカル変数の観測された度数分布が、理論的に想定される分布と適合しているかどうかを検定する手法です 。  

  • 目的:観測データが、特定の理論や先行研究から予測される比率と一致するかどうかを検証する。

  • 例題:ある心理学の選択問題(選択肢A, B, C, D)について、「全ての選択肢が等しく選ばれるはずだ」という帰無仮説を立てたとします。この場合、期待度数は全回答者数を4で割った値になります。実際に100人の学生に回答してもらったところ、観測度数がA:35人, B:20人, C:25人, D:20人となった場合、この観測された偏りは偶然の範囲内なのか、それとも意味のある偏りなのかを適合度の検定で評価します 。  

  • 自由度の計算:自由度(df)は「カテゴリ数 - 1」で計算されます。上記の例では df = 4 - 1 = 3 となります。

独立性の検定

 独立性の検定(Test of Independence)は、2つのカテゴリカル変数の間に関連があるかどうか(一方の変数のカテゴリが、もう一方の変数のカテゴリに依存しているか)を検定する手法です 。データは通常、クロス集計表(分割表)の形で整理されます。  

  • 目的:2つの変数が互いに独立であるか、それとも連関しているかを検証する。

  • 例題:「性別(男性/女性)」と「ストレス対処法(問題解決型/情動発散型)の選択」に関連はあるでしょうか。帰無仮説は「性別とストレス対処法の選択は独立である(関連がない)」となります。この仮説のもとでの期待度数は、周辺度数(行と列の合計値)から計算されます。観測度数がこの期待度数から大きく乖離していれば、2つの変数は独立ではなく、何らかの関連があると結論づけられます。

  • 自由度の計算:自由度は「(行の数 - 1) \times (列の数 - 1)」で計算されます。上記の例(2x2のクロス集計表)では df = (2 - 1) \times (2 - 1) = 1 となります 。  

 この2つの検定は計算プロセスが似ていますが、その目的と期待度数の算出方法が根本的に異なります。適合度の検定は「1つの変数が理論と合うか」、独立性の検定は「2つの変数が互いに関連しているか」を問うている点を明確に区別してください 。  

1-3: 2群間の差の検定(ノンパラメトリック版)

 t検定が2群の平均値の差を検定するのに対し、そのノンパラメトリック版は、データの順位情報を用いて2群の中央値や分布の位置の差を検定します。

ここで極めて重要なのは、研究デザインに応じて適切な検定手法を選択することです。

対応のない2群(独立サンプル):マン・ホイットニーのU検定

マン・ホイットニーのU検定(Mann-Whitney U test)は、対応のない2群(独立サンプル)の差を比較するためのノンパラメトリック検定です。

これは、独立サンプルのt検定のノンパラメトリック版に相当します。

  • 用途:2つの独立したグループ(例:実験群と統制群、男性群と女性群)から得られたデータ(順序尺度、または正規分布しない連続変数)を比較する場合に用いる。

  • ロジック:2つのグループのデータを混ぜ合わせ、全体で順位をつけます。もし2つのグループの分布に差がなければ、それぞれのグループの順位は全体にまんべんなく散らばるはずです。逆に、一方のグループに順位が偏っていれば(例:実験群の順位が全体的に高い)、2つのグループには差があると判断します。

  • 例題:ある新しい記憶術の効果を検証するため、参加者をランダムに2群に分け、一方には新しい記憶術を(実験群)、もう一方には従来の記憶術を(統制群)実施してもらいました。その後、記憶テストの成績を比較します。テストの点数が正規分布していない場合、マン・ホイットニーのU検定を用いて2群間の成績に有意な差があるかを検定します 。  

  • 補足:この検定はウィルコクソンの順位和検定(Wilcoxon rank-sum test)と実質的に等価であり、統計ソフトによってはこの名称で出力されることもあります 。

     

対応のある2群(関連サンプル):ウィルコクソンの符号順位検定

 ウィルコクソンの符号順位検定(Wilcoxon signed-rank test)は、対応のある2群(関連サンプル)の差を比較するためのノンパラメトリック検定です。

これは、対応のあるサンプルのt検定のノンパラメトリック版に相当します。

  • 用途:同じ対象者に対して2回測定を行った場合(例:介入前と介入後)や、マッチングされたペアのデータを比較する場合に用いる。

  • ロジック:各ペアの差を計算し、その差の絶対値に順位をつけます。そして、元の差がプラスであった順位の和と、マイナスであった順位の和を比較します。もし介入に効果がなければ、プラスの差とマイナスの差は同程度に生じるはずです。逆に、どちらか一方に偏っていれば(例:介入後にスコアが改善し、プラスの差の順位和が非常に大きい)、介入には効果があったと判断します 。  

  • 例題:ある不安障害の治療プログラムの効果を検証するため、参加者20名のプログラム参加前の不安スコアと、参加後の不安スコアを測定しました。この前後でのスコアの変化に統計的な有意性があるかを調べる場合、ウィルコクソンの符号順位検定を用います。

研究デザイン(対応のある/なし)の違いは、統計手法を選択する上での最も基本的な分岐点です。この区別を曖昧にすることは、研究全体の妥当性を損なう致命的な誤りにつながります。

1-4: 3群以上の差の検定(ノンパラメトリック版):クラスカル・ウォリス検定

 研究では、3つ以上のグループを比較したい場面も頻繁にあります。

例えば、3種類の異なる教授法が学習効果に与える影響を比較する場合などです。

パラメトリック検定では一元配置分散分析(one-way ANOVA)を用いますが、データがその前提条件を満たさない場合には、ノンパラメトリック版であるクラスカル・ウォリス検定(Kruskal-Wallis test)を用います 。  

  • 用途:3つ以上の独立したグループ間の差を比較するためのノンパラメトリック検定。一元配置分散分析のノンパラメトリック版に相当します。

  • ロジック:マン・ホイットニーのU検定を3群以上に拡張したもので、全てのグループのデータを混ぜ合わせて全体で順位をつけ、各グループの順位和を比較します。

  • 例題:臨床心理士が、3つの異なる心理療法(認知行動療法、精神分析療法、来談者中心療法)を受けたクライエント群の満足度を比較したいと考えています。満足度が順序尺度で測定されている場合、クラスカル・ウォリス検定を用いて、3つの療法群の間に満足度の有意な差があるかを検定します。

「オムニバス検定」と多重比較の必要性

 分散分析と同様に、クラスカル・ウォリス検定もオムニバス検定(omnibus test)です。これは、検定結果が有意であったとしても、「3群以上のグループのどこかに、少なくとも1つの差が存在する」ということしか示してくれない、ということを意味します 。

具体的にどのグループとどのグループの間に差があるのか(例:認知行動療法は精神分析療法よりも満足度が高いのか?)を知ることはできません。  

 この具体的な差を特定するためには、クラスカル・ウォリス検定で有意な結果が得られた後に、多重比較(multiple comparisons)または事後検定(post-hoc tests)と呼ばれる追加の分析を行う必要があります。

 ノンパラメトリックの多重比較法としては、Dunn検定(Dunn's test)などがよく用いられ、その際には第1種の過誤(本当は差がないのに、誤って「差がある」と判断してしまうエラー)が増大するのを防ぐために、ボンフェローニ補正などの調整が行われます 。

3群以上の比較でクラスカル・ウォリス検定を用いる場合は、多重比較が必須のセットであると覚えておきましょう。  

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第2部:実践的応用と大学院入試で問われる思考力

2-1: 研究デザインと適切な統計手法の選択

 ここまで、様々な相関係数とノンパラメトリック検定を学んできました。

大学院入試や実際の研究で問われるのは、これらの知識を断片的に記憶していることではなく、特定のリサーチクエスチョンとデータに対して、最も適切な分析手法を論理的に選択できる能力です。

 以下の表は、本章で学んだノンパラメトリックな手法と、それに対応するパラメトリック検定をまとめたものです。この対応関係を理解することは、統計手法の全体像を把握し、状況に応じて適切なツールを選ぶための羅針盤となります。

表1:パラメトリック検定とノンパラメトリック検定の対応

研究の目的

研究デザイン

パラメトリック検定(前提条件を満たす場合)

ノンパラメトリック検定(前提条件を満たさない/順序尺度・名義尺度の場合)

2つの連続変数の関連性を評価する

-

ピアソンの積率相関係数 ( r )

スピアマンの順位相関係数 (ρ)

独立した2群を比較する

対応のない2群(Between-Subjects)

独立サンプルのt検定

マン・ホイットニーのU検定

関連のある2つの測定値を比較する

対応のある2群(Within-Subjects)

対応のあるサンプルのt検定

ウィルコクソンの符号順位検定

独立した3群以上を比較する

対応のない3群以上(Between-Subjects)

一元配置分散分析(ANOVA)

クラスカル・ウォリス検定

1つのカテゴリ変数の度数分布を評価する

-

-

カイ二乗適合度の検定

2つのカテゴリ変数の関連性を評価する

-

-

カイ二乗独立性の検定

 この表を頭に入れておけば、「介入前後の変化を見たいが、データが正規分布していない」→「対応のある2群で、ノンパラメトリック」→「ウィルコクソンの符号順位検定」というように、論理的に正しい分析手法を導き出すことができます。

2-2:  心理統計学における「よくある誤り」と批判的吟味

 大学院では、他者の研究論文を批判的に読み解く能力が求められます。そのためには、統計分析においてどのような誤りが起こりやすいかを知っておくことが不可欠です。

ここでは、初学者から時に専門家までが陥りがちな、典型的な誤りをいくつか紹介します。

これらの点を意識することで、より深いレベルで研究を評価し、また自身の研究計画をより洗練させることができます。

誤り1:相関-因果の混同(再訪)

 #5 「相関係数」の章で繰り返し強調したように、相関関係から安易に因果関係を推論することは、最も基本的かつ重大な誤りです。

研究論文の考察を読む際には、著者が相関関係の結果を、あたかも因果関係が証明されたかのように記述していないか、常に注意深くチェックする必要があります。

誤り2:外れ値の無視

 ピアソンの積率相関係数 r は、外れ値(outlier)、つまり他のデータ点から極端に離れた値の影響を非常に受けやすいという性質があります 。

たった一つの外れ値が存在するだけで、相関係数の値が劇的に変化し、本来は存在しない相関が検出されたり、逆に存在するはずの相関が見えなくなったりすることがあります。

データを分析する前には必ず散布図を描いて外れ値の有無を確認し、もし外れ値が存在する場合は、それを含めた場合と除外した場合の両方で分析を行ったり、外れ値の影響を受けにくいスピアマンの順位相関係数を用いるなどの対策を検討すべきです 。  

誤り3:不適切な相関係数の適用

 順序尺度で測定されたデータ(例:満足度を「1:不満」~「5:満足」で評定)に対して、ピアソンの積率相関係数を計算してしまう誤りが散見されます 。順序尺度は、数字の間の間隔が等しいことを保証しないため、このようなデータにはスピアマンの順位相関係数などを用いるのが適切です。  

誤り4:多重比較の問題

 3つのグループ(A, B, C)を比較したい場合に、分散分析やクラスカル・ウォリス検定を使わずに、t検定やU検定を3回(A vs B, B vs C, A vs C)繰り返すのは、統計的に不適切な手続きです 。

検定を繰り返すごとに、偶然有意な差が出てしまう確率(第1種の過誤)が累積的に増加してしまいます。

これを ファミリーワイズエラー率の増大と呼びます。

3群以上の比較には、まず全体を検定するオムニバス検定(ANOVAやクラスカル・ウォリス検定)を行い、その後に適切な多重比較法を用いるのが正しい手順です。

誤り5:結果の過剰な一般化

 多くの心理学研究は、特定の集団(例えば、大学の心理学専攻の学生)を対象に行われます。このような便宜的なサンプリングによって得られた結果を、あたかも人類全体に当てはまるかのように一般化して解釈することには慎重でなければなりません 。

研究結果の適用範囲には限界があることを常に意識し、どのような対象者から得られたデータなのかを吟味する姿勢が重要です。  

 これらの「よくある誤り」を理解することは、単にテストで点を取るためだけではありません。それは、科学的な知見を正しく評価し、自らが信頼性の高い研究を遂行するための「科学者の目」を養うことに他なりません。大学院は、まさにそのような批判的思考力を涵養する場なのです。


おわりに

 ノンパラメトリック検定は、心理統計学の中では少し地味に見えるかもしれません。しかし、心理系大学院の入試や研究の現場では、知っているかどうかが実力の差につながる重要な分野です。

今回紹介した内容をきっかけに、「なぜこの検定を使うのか」「どんな場面で役立つのか」という視点で考えられるようになると、統計の理解がぐっと深まります。

心理系大学院受験は知識だけでなく、柔軟な発想力や応用力も試されます。ノンパラメトリック検定をしっかり理解しておけば、試験でも研究でも安心して臨めるはずです。

一歩一歩の積み重ねが合格につながります。ぜひ今回の学びを、自分の受験勉強や研究計画に活かしてください。


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