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心理系大学院予備校 〜専門記述問題対策;河合隼雄先生の問題〜

Blog心理系大学院予備校 〜専門記述問題対策;河合隼雄先生の問題〜

2024/2/9

心理系大学院予備校 〜専門記述問題対策;河合隼雄先生の問題〜

大学院受験の問題解説

Noet記事からの続きです。

放送大学大学院(2020)の問題を取り上げました。

この問題は、ユング派の重鎮、河合隼雄先生が言ったことについての解釈問題です。

『心理療法に関して、河合隼雄は「セラピストは何もしないよう全力をあげる」という趣旨のことをしばしば語っていた。この河合の言葉はどのようなことを意味していると理解されるか、述べなさい(600字)』

この問題のポイントは、『セラピストは何もしないよう全力をあげる』をどのように解釈するかにあります。

カウンセリングでは、クライエントが悩みを持って相談に来るわけですから、セラピストは、アセスメントの段階で「この人は状況を否定的に認知して苦しみの感情が出ている」「これが維持要因である」と、理論の枠組みで理解しようとします。

それを主観ではなく、根拠とされたりもしますが、河合先生は、それは余計なことだと言います。

また、セラピストが根拠をもって理解しようとすることは、クライエントの語った意図がセラピストの受けとり方しだいで変わってしまう。本来のクライエントの語りが、セラピストに合わせた語りとなってしまうといいます。

例えば、認知行動療法の心理教育を行うと、クライエントが認知行動療法に寄った語りになるということですね。「私の認知が〜」と言い出したりするわけです。

そのほか、クライエントが気を使って、セラピストが喜ぶ語りを始めることもありますね。一見良くなったと思っても、それはクライエントが気を使ってくれてよくなった語りをしてくれているだけなわけです。

河合先生は、著書『「あるがまま」を受け入れる技術 』の中で、「何もしないよう全力をあげる」を老子の言葉を引用しながら説明しています。


老子の言葉で、「無為をなせば、すなわち治まらざるはなし」というのがあります。これは政治の話でして、為政者が一部の人を優遇したりするから争い事が起きる、よけいな作為をしないでおけば治まらない国はない、ということを言ってるんですね。しかしこれは、心理療法でも同じことです。 

そうなるように僕が導くわけじゃないんです。もともとそういう可能性をその人が持っているんですね。その人がもともと持ってるものが自然に出てくるのを待つよりしようがない。だから、カンセリングというのは大変なんです。待ってるだけの商売ですよ(笑)。本当に気の遠くなるぐらい気の長い話ですね。

大切なのは、ただ待ってるだけじゃないということですね。希望をちゃんと持っている。そこが違うんです。だから、長いこと待っていてもイライラしないんですね。下手な人は、待っているうちにイラつくんですよ。そうすると、相手もイラつくわけです。その点、僕なんかはもう堂々と待っていますから(笑)。

 「何もしないことに全力を傾注する」。それはものすごいエネルギーのいる仕事ですよ。よほどエネルギーがなかったらできないです。そのエネルギーをうまくコントロールできないから、爆発してイライラするんですね。

                                      「あるがまま」を受け入れる技術(河合隼雄,谷川浩司著)PHP文庫 


河合先生が何度も述べていますから、それはどういうメカニズム?という疑問が湧きます。

京都大学名誉教授の山中康弘先生は、「追悼記」の中で、これがカウンセリングや心理療法の「本質」であり、「真実」であるとし、河合先生がそれを学問的に明らかにしたと述べておられました。山中先生がそう言われていたこともあり、セラピストが何もしないよう全力をあげることで、クライエントが自律的に変容する、そのダイナミックスについて、河合先生は実際どのように述べているのか知りたくなり、著作や論文を読み漁ったのですが、見つられませんでした(先生の著作はたくさんあるので、どこかにはあるかと思います)。

そこで次回は、ユング心理学の観点から、「何もしないよう全力をあげるセラピストとクライエントのダイナミクス」について触れてみたいと思います。


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