2025/8/12
発達心理学とは|ピアジェ・エリクソンの発達段階をわかりやすく解説
【発達心理学まとめ】赤ちゃんの不思議から大人の心まで!一生を旅する心理学
「子どもの成長って、本当に不思議」
「思春期の頃、どうしてあんなに悩んでいたんだろう?」
子育て中の方や、自分の人生を振り返る中で、こんな疑問を抱いたことはありませんか?
人の心がどのように育ち、変化していくのかを探る学問——それが発達心理学です。
かつては子どもの心を対象とする「児童心理学」が中心でしたが、現在では誕生から老年期まで、一生涯のライフステージを研究対象としています。
この記事では、発達心理学の重要なキーワードや代表的な理論を、できるだけ分かりやすく解説します。
「発達」には2つの側面がある
そもそも「発達」とは、時間の経過にともなう心と体の変化のことです。
これには、大きく分けて2つの側面があります。
量的発達: 身長が伸びたり、体重が増えたりするような、量的な変化。
質的発達: 言葉を上手に使えるようになったり、自分の視点だけでなく相手の立場でものを考えられるようになったりする、質的な変化。
近年では、栄養状態の向上などを背景に、子どもの成長スピードが早まる発達加速現象というものも知られています。これには、体格が大きくなる「成長加速現象」と、精神的な成熟が早まる「成熟前傾現象」があります。
発達は「遺伝」or「環境」?永遠のテーマを探る
「人の性格や能力は、生まれつき決まっているのか?それとも育った環境で決まるのか?」
これは、昔から発達心理学における大きなテーマでした。この「遺伝か、環境か」という論争について、いくつかの有名な研究や学説をご紹介します。
双生児研究と野生児研究
遺伝と環境の影響を調べるため、心理学では一卵性双生児を対象とした研究が行われてきました。
心理学者のゲゼルは、一卵性双生児のひとりにだけ特定の訓練をさせ、もうひとりにはさせない、という実験(双生児統制法)を行いました。
その結果、訓練をしなかった子も、ある時期が来ると自然と訓練した子と同じことができるようになったのです。このことからゲゼルは、何かを学習するためには、心身の発達的な準備が整っている状態、いわゆるレディネス(学習準備性)が必要不可欠であることを見出しました。
一方で、人間社会から隔離されて育った「野生児」の研究は、環境の重要性を示しています。
例えば、オオカミに育てられたと考えられているアマラとカマラという姉妹や、16歳まで牢獄に閉じ込められていたカスパー・ハウザーといった事例があります。彼らは発見当初、言葉をうまく使えませんでしたが、その後の教育によって少しずつ言葉を習得していきました。
これらの事例は、特に言葉や感情の発達において、乳幼児期の適切な環境が非常に重要であり、物事を習得するのに最適な「臨界期」が存在することを示唆しています。
遺伝と環境をめぐる4つの学説
この「遺伝 vs 環境」論争には、主に4つの考え方があります。
成熟説(生得説) ゲゼルなどが唱えた説で、人の性格や能力は遺伝によって生まれつき決まっており、それが自然に現れてくるという考え方です。
環境説(経験説) ワトソンなどが唱えた説で、人の性格や能力は、育った環境の影響を受け、経験によって作られていくという考え方です。
輻輳(ふくそう)説 シュテルンが唱えた説で、発達は遺伝だけでも環境だけでもなく、遺伝要因と環境要因の足し算で決まるという考え方です。
相互作用説 ジェンセンが唱えた説で、発達は遺伝要因と環境要因が互いに影響し合う(掛け算)ことによって形成されるという、現在の主流となっている考え方です。
人は世界をどう捉える?ブロンフェンブレンナーの理論
アメリカの心理学者ブロンフェンブレンナーは、人間を取り巻く「環境」を4つの層に分けて考える生態学的発達理論を提唱しました。
人は、これらの環境システムから多大な影響を受けて発達していく、と考えたのです。
マイクロシステム: 家庭といった、子どもにとって最も身近な直接的環境です。
メゾシステム: 学校や近所など、家庭から少し離れた環境同士の関わりを指します。
エクソシステム: 両親の職場など、子ども自身は直接関わらないものの、間接的に影響を及ぼす環境のことです。
マクロシステム: 上記のすべてを含む、社会全体や文化といった大きな環境を指します。
自分や子どもが、どんな環境に囲まれているかをイメージしてみると面白いかもしれませんね。
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人生をステージ分け!代表的な3つの発達段階理論
発達心理学では、人の一生をいくつかの「時期」や「段階(ステージ)」に分けて考えます。ここでは、特に有名な3人の心理学者が提唱した発達段階理論を見ていきましょう。
① ピアジェの認知発達理論
スイスの心理学者ピアジェは、物事を理解したり考えたりする「認知機能」が、どのように発達していくかを研究しました。
ピアジェは、人が物事を理解するための基本的な枠組み(テンプレートのようなもの)を「シェマ」と呼びました。 例えば、子どもが「4本足でワンワン鳴く動物」を「犬」というシェマで理解します。そして、別の種類の犬を見ても「犬」だと理解できます(これを同化といいます)。 しかし、猫のように「4本足だけどニャーと鳴く動物」に出会うと、既存のシェマでは対応できず、「猫」という新しいシェマを作る必要が出てきます(これを調節といいます)。
このように、「同化」と「調節」をバランスよく繰り返しながら、子どもは世界をよりうまく理解できるようになっていく(均衡化)と考えたのです。
ピアジェは、認知発達を以下の4つの段階に分けました。
感覚運動期(0~2歳頃) 感覚や体の動きを通して世界を学びます。目の前から物が消えても、それが存在し続けていると理解する「対象の永続性」がこの時期に確立します。「いないいないばあ」を喜ぶのは、この能力が育っているからです。
前操作期(2~7歳頃) ごっこ遊び(象徴機能)が盛んになります。あらゆるものに命が宿っていると考えるアニミズムや、自分からの視点で世界を見る自己中心性がこの時期の大きな特徴です。
具体的操作期(7~11歳頃) 目の前にある具体的な物事について、論理的に考えられるようになります。例えば、コップの形が変わっても中のジュースの量は同じだと分かる「保存の概念」を理解します。また、自分以外の視点を理解する「脱中心化」が進みます。
形式的操作期(11,12歳以降) 目に見えない抽象的な事柄についても、論理的に考えられるようになります。仮説を立てて考えたり(仮説演繹思考)、複雑な組み合わせを考えたりできるようになります。
② エリクソンの心理社会的発達理論
心理学者のエリクソンは、人の一生を8つの段階に分け、それぞれの段階で乗り越えるべき心理社会的な課題(危機)があるとしました。その課題をうまく乗り越えられるかどうかが、その後の人格形成に大きく影響すると考えられています。
エリクソンが提唱した8つの段階と、それぞれの課題は以下の通りです。
乳児期: 基本的信頼 vs 不信
児童前期: 自律性 vs 恥と疑惑
遊戯期: 積極性 vs 罪悪感
児童期: 勤勉性 vs 劣等感
青年期: アイデンティティ vs 同一性拡散
成人前期: 親密性 vs 孤立
成人期: 生殖性 vs 停滞
老年期: 統合 vs 絶望
特に有名なのが、青年期の課題である「アイデンティティ(自我同一性)の確立」です。これは、「自分は何者で、何のために生きるのか」という問いに対して、自分なりの答えを見つけていく過程を指します。これがうまくいかないと、自分が何者か分からなくなる「アイデンティティの危機」に陥るとされています。
モラトリアム期とは?
エリクソンは、青年期を「モラトリアム期」と呼びました。
モラトリアムとは、もともと「猶予期間」という意味で、心理学では大人としての社会的責任をまだ完全には負わず、さまざまな価値観や役割を試行錯誤する時期を指します。
この時期には、進路・職業・人間関係・生き方など、多方面で模索と試みを繰り返します。試行錯誤を通して自己理解を深め、最終的に安定したアイデンティティを形成していきます。
一方で、この期間が長く続きすぎると、社会参加への適応が遅れる場合もあります。
③ フロイトの心理-性的発達理論
精神分析学の創始者であるフロイトは、人は生まれながらに性的な欲求を持っており、その欲求が満たされる体の部位が年齢によって変わっていくと考えました(心理-性的発達理論)。各発達段階でその欲求が十分に満たされないと、その段階にこだわりが残ってしまう「固着」が起こり、特定の性格傾向を生むとされています。
赤ちゃんの不思議に迫る!乳幼児期の発達トピックス
ここからは、人生のスタート地点である「乳幼児期」に焦点を当てて、興味深い発達のトピックスをいくつかご紹介します。
生まれたときから備わる「原始反射」
赤ちゃんには、自分の意思とは関係なく起こる原始反射と呼ばれる動きが備わっています。これは脳が成熟するにつれて自然に消えていくものです。
主な原始反射には、以下のようなものがあります。
吸啜(きゅうてつ)反射: 口に触れたものに何でも吸いつこうとする反射です。
口唇探索反射: 唇の周りに指などが触れると、そちらに顔を向けて口を開く動作です。
把握反射: 手に物が触れると、ギュッと握ろうとする反射です。
モロー反射: 大きな音など外部からの刺激に対して、手足を広げたり、しがみつこうとしたりする反応です。
バビンスキー反射: 足の裏をこすると、親指が反り返り、他の指が開く状態になることです。
「クーイング」と「喃語」はどう違う?
赤ちゃんの言葉の発達は、「泣く」ことから始まります。
クーイング: 生後2ヶ月頃から見られる、「あー」「うー」といった母音を中心とした発声で、主に機嫌の良い時に発せられます。
喃語(なんご): 生後5〜6ヶ月頃から始まる、「ばぶばぶ」といった母音以外も含む発声で、特に意味は持ちません。
そして1歳頃に意味のある最初の言葉(初語)を話し始め、1歳半を過ぎる頃から2つの単語をつなげた二語文を話すようになっていきます。
人との絆をむすぶ「愛着(アタッチメント)」
愛着(アタッチメント)とは、赤ちゃんと養育者(主に母親)との間に生まれる、情緒的な強い絆のことです。
心理学者のハーロウは、アカゲザルの赤ちゃんを使った有名な実験を行いました。この実験では、ミルクをくれる針金でできた母親の人形と、ミルクはくれないけれど柔らかい布でできた母親の人形を用意しました。するとサルの赤ちゃんは、食事を与えてくれる針金の母親よりも、心地よい肌触りの布の母親にしがみついて多くの時間を過ごしたのです。 このことから、愛着の形成には、食事などの生理的な満足だけでなく、心地よい肌の触れ合いが非常に重要であることが示されました。
この愛着が何らかの理由で損なわれること(母性剥奪)は、その後の子どもの発達に様々な影響を及ぼすと考えられています。
他者と関わる中で育まれる心
最後に、子どもがどのように他者を理解し、社会性を身につけていくのかを見ていきましょう。
「心の理論」の獲得
自分に心があるように、相手にも心があり、自分とは違う考えや感情を持っている、と理解する能力を「心の理論」と呼びます。
この心の理論が育っているかを調べる有名な課題が「サリーとアン課題(誤信念課題)」です。 これは登場人物のサリーとアンを使ったお話で、「サリーがビー玉をカゴに入れた後、その場を離れます。サリーの見ていない間に、アンがそのビー玉を箱に移してしまいます。戻ってきたサリーは、ビー玉を探すとき、最初にどこを探すでしょうか?」と質問するものです。
正解は「カゴ」です。サリーはビー玉が箱に移されたことを知らないはずだからです。多くの子どもは4〜5歳頃にこの課題に正解できるようになり、これは他者の視点に立って物事を考えられるようになった証拠と言えます。
友だちとの関係が重要になる時期
児童期の後期になると、子どもたちは自発的に仲良しグループを作ることが多くなります。特に、同性で構成されるこの小集団の時期はギャングエイジと呼ばれ、子どもの社会性を育む上で重要な役割を果たします。
また、心理学者のサリヴァンは、思春期に入る前の時期に、特定の親友と深く関わる関係(チャムシップ)を築くことが、その後の対人関係の基礎になると考え、その重要性を強調しました。
本記事で紹介した重要キーワードまとめ
この記事で登場した、発達心理学を理解する上で欠かせないキーワードを一覧にまとめました。復習にお役立てください。
発達心理学の基本
レディネス: 何かを学習するための心身の準備が整っている状態のこと。
臨界期: ある能力を獲得するために、特に重要な特定の時期のこと。
相互作用説: 発達は、遺伝と環境が互いに影響し合って決まるという考え方。
生態学的発達理論: 人は家庭・学校・社会といった多層的な環境システムから影響を受けて発達するという理論。
ピアジェの理論
シェマ: 物事を理解するための、自分なりの認識の枠組み。
同化と調節: 既存のシェマで物事を理解しようとすること(同化)と、新しいシェマを作って対応すること(調節)。
対象の永続性: 目の前から物が消えても、存在し続けていると理解できる能力。
自己中心性: 自分からの視点で世界を見てしまう性質。
保存の概念: 容器の形が変わっても、中身の量は変わらないと理解できること。
エリクソンの理論
アイデンティティ(自我同一性): 「自分は何者か」という自己の感覚。青年期の重要な発達課題。
モラトリアム期:大人としての社会的責任を一時的に猶予され、進路や価値観、役割を試行錯誤しながらアイデンティティ(自我同一性)を模索する青年期特有の時期。
乳幼児期の発達
原始反射: 赤ちゃんに生まれつき備わっている、意思とは無関係な反射運動。
クーイング・喃語(なんご): 言葉の発達の初期段階。「あーうー」というクーイングから、「ばぶばぶ」という喃語へと進む。
愛着(アタッチメント): 赤ちゃんと養育者との間に生まれる情緒的な強い絆。
心の理論: 他者にも自分と同じように心があり、考えや感情が違うことを理解する能力。
サリーとアン課題: 「心の理論」の獲得を調べるための有名な課題。
児童期・思春期の発達
ギャングエイジ: 児童期後期にみられる、同性の仲間でグループを作る時期のこと。
チャムシップ: 思春期前に、特定の親友と築く深い友情関係。
このようなキーワードは、心理系大学院の入試の記述問題や選択肢問題で頻出です。繰り返し目にして、理解を深めていきましょう!
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おわりに
今回は、発達心理学の広大な世界を駆け足で巡ってきました。
発達心理学は、人の一生涯の心と体の変化を探求する学問である。
人の発達は、遺伝と環境が複雑に影響し合って(相互作用)決まる。
ピアジェやエリクソンなど、多くの心理学者が人生をステージに分けた発達段階理論を提唱している。
特に乳幼児期は、原始反射や愛着形成など、その後の発達の土台となる重要な出来事が詰まっている。
人は、他者との関わりの中で「心の理論」や社会性を身につけていく。
発達心理学を学ぶことは、心理学の大学院入試のための知識を得られるだけでなく、自分自身の過去を理解し、未来を考える上でも、きっと大きな助けになるはずです。
この記事が、あなたにとって自分や周りの大切な人たちをより深く理解するきっかけとなれば幸いです。
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