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エビデンスベースとナラティブベースの違い|臨床心理学の2つの視点

Blogエビデンスベースとナラティブベースの違い|臨床心理学の2つの視点

2024/9/20

エビデンスベースとナラティブベースの違い|臨床心理学の2つの視点

生物心理社会モデル(Bio-Psycho-Social model)は、心理的な問題を生物学的・心理的・社会的の3側面から捉える枠組みです。 この記事では、エンゲルによる提唱の背景から、科学者―実践家モデル、ナラティブ・アプローチとの関係までを整理します。

臨床心理学における科学者―実践家モデルの重要性

臨床心理学は、心理的問題の研究とその実践的応用を組み合わせた学問であり、治療と支援のために多くの技法が用いられます。その中で重要な概念の一つが「科学者―実践家モデル」です。このモデルは、臨床心理学において科学的研究を基盤としながら、実際の臨床現場で得た知見を生かすという両面性を持っています。近年では、内省的科学者―実践者モデル(reflective scientist-practitioner model)と呼ばれ、支援者が自らの内的な反応や感情を理解することも重視されています。

科学者―実践家モデルは、心理学の専門職がエビデンスに基づいた判断を行い、クライエントに最適なサービスを提供するための枠組みです。心理学的なアセスメントやフォーミュレーションを通じて、クライエントの状況を総合的に理解し、個別の介入計画を立てます。このプロセスでは、心理的なアプローチだけでなく、生物学的、社会的な要因も考慮され、これを「生物-心理-社会モデル(Bio-Psycho-Social model)」と呼びます。

生物-心理-社会モデルは、1970年代にエンゲル(Engel, G.)によって提唱され、心理学的問題を理解する際に、生物学的要因、心理的要因、社会的要因の3つの側面から多角的にアプローチする重要性を強調しています。このモデルは、従来の生物医学モデルに代わり、臨床心理学における新しい視点を提供し、クライエントの全体像を把握するための有効な手法となっています。

また、臨床心理学に基づく心理支援者は、心理学的アセスメント心理学的フォーミュレーション心理学的介入研究などの知識と技術を活用して、クライエントの状態を評価し、適切な支援を提供します。こうしたプロセスを通じて、臨床心理学の実践者は科学的根拠に基づく治療法を用い、クライエントの心理的、社会的な健康をサポートします。

臨床心理学の実践においては、クライエントの個別の状況に合わせたアプローチが求められ、支援者は専門職としての倫理や多様性に配慮しながら、最適な支援を提供します。また、心理臨床家自身も、セルフケアやスーパービジョンを活用することで、自身の成長も促されます。

このように、臨床心理学は、科学と実践が融合した学問であり、クライエントの心理的な支援に重要な役割を果たしています。

臨床心理学におけるナラティブベース・アプローチの重要性

しかしながら、エビデンスベースとした臨床心理学も、近年においては、ナラティブベース(narrative-based)のアプローチも重視しています。

1990年代に臨床心理学の領域から生まれましたが、現在では医療やソーシャルワークなどの分野でも実践されています。ナラティブ・アプローチの中でも、特に相談者の自主的な語りを重視する実践的な心理療法は「ナラティブ・セラピー」と呼ばれます。

ナラティブベースアプローチは、エビデンスベース(evidence-based)の心理支援とは異なる視点からクライエントを理解し、支援する方法です。ナラティブベースの重要性について、以下のようにまとめられます。

・クライエントの個別性と文脈の重視

ナラティブベース・アプローチでは、クライエントの語る「物語(ナラティブ)」に焦点を当て、その個人がどのような体験をし、どのように意味を見出しているかを重視します。クライエントの人生経験や価値観、文化的背景などは非常に多様であり、一人一人の問題の解釈や対処法も異なります。エビデンスベースのアプローチが一般化されたデータや統計に基づいているのに対し、ナラティブベースはその人自身の語りを通じて、クライエントが自分の問題をどのように理解しているのかに注目します。

・ クライエントとの共同作業

ナラティブベース・アプローチでは、支援者とクライエントが共に問題を解決するための「共同作業」を強調します。クライエントが自分自身の経験や困難をどのように語り、解釈しているかを尊重し、クライエント自身が物語を再構成し、新たな視点や解釈を得るプロセスに支援者が伴走します。これにより、クライエントは自らの物語に新たな意味を見出し、困難に対処する力を促します。

ナラティブベース・アプローチは、支援者がクライエントに一方的に解決策を提示するのではなく、クライエントが主体的に問題を再解釈し、自己成長を促す手助けをするものです。このプロセスは、クライエントの自己効力感や自信を高める効果があるとされています。

・ 標準化されていない問題への対応

エビデンスベースのアプローチは、効果が統計的に証明された方法を用いて治療を進めるため、一般的には有効な場合が多いものの、個々のクライエントの複雑な状況や標準化された治療法に当てはまらないケースには不十分な場合もあります。一方で、ナラティブベースのアプローチは、個々のクライエントの背景や状況に応じて柔軟に対応することが可能です。

特に、複雑なトラウマ体験や多文化的な背景を持つクライエント、または標準的な治療法では効果が得られなかったクライエントに対して、ナラティブベースのアプローチは、より個別的で深い理解を提供することで効果を発揮します。

・関係性の強化と治療的信頼

ナラティブベースのアプローチでは、クライエントと支援者の信頼関係が非常に重要です。クライエントの語りに耳を傾け、それを深く理解しようとする態度が、クライエントとの治療的な信頼関係を強化します。支援者がクライエントの語る内容を尊重し、判断せずに受け入れることで、クライエントは安心して自己開示を行い、より深い自己理解へと進むことができます。

・まとめ

ナラティブベースのアプローチは、エビデンスベースのアプローチが提供する科学的根拠を補完するものとして非常に重要です。クライエントの個別的な文脈や語りを重視し、共同作業を通じて問題の再解釈や自己成長を促す点で、クライエントに対する包括的な支援が可能となります。したがって、臨床心理学においては、エビデンスベースとナラティブベースの両方を柔軟に活用し、クライエントのニーズに応じた支援が求められます。

個別アプローチに寄らない臨床心理学の歴史を大まかに解説しました。また次をお楽しみに!!

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