Blog 心理英語 #5:選挙とトラウマの意外な関係― affective polarization は癒されるか?
2024/11/20
心理英語 #5:選挙とトラウマの意外な関係― affective polarization は癒されるか?
心理英語の窓をひらこう:最新心理学記事で学ぶ表現と知識
Opening the Window to Psychological English: Learn Expressions and Knowledge through the Latest Psychology Articles
このブログでは、心理学、脳科学、精神医学などの最新の英語論文から、興味深いトピックをピックアップして解説します。英語が得意でない方でも理解しやすいように、重要なフレーズや単語の意味を分かりやすく紹介し、心理英語の世界に自然と慣れ親しめる内容を目指しています。リラックスして読み進める中で、心理系大学院の受験にも役立つ英語力が少しずつ身につく、そんな実践的でフレッシュな記事をお届けします。
選挙とトラウマの意外な関係―affective polarization (心の分断) は癒されるか?
みなさん、こんにちは。公認心理師や臨床心理師を目指して心理系大学院を受験する皆さんの英語学習を応援するブログです。今回は、最近多くの人の関心を集めた「選挙」に関連する話題を、最新の英文記事からお届けします。受験勉強の合間に気分転換として、リラックスして読んでください。
選挙と「心の分断」
選挙は民主主義の象徴ともいえる重要なプロセスです。しかし、最近の選挙では、その結果が社会や個人にポジティブな影響をもたらす一方で、ネガティブな影響を引き起こすことも指摘されています。例えば、日本の衆院選挙やアメリカ大統領選挙、兵庫県知事選挙など、多くの注目を集めた選挙では、選挙戦の過程や結果を受けて、社会的な分断の兆候が感じられ、人々がモヤモヤした感情を抱える場面もあったように思われます。このような分断は単なるストレスを超え、心理的なトラウマの引き金になる場合さえもあることが報告されています。
今回取り上げる英文記事は、選挙が引き起こす心理的影響を感情的分極化(affective polarization)と道徳的負傷(moral injury)という視点から考察しています。
感情的分極化(Affective Polarization)と選挙関連PTSD
〔今回のフレーズその1〕
The team found that respondents with higher levels of affective polarization reported significantly more election-related PTSD symptoms than those with lower levels.
(Denis Storey, Post-2020 Election Partisan Hostility Left Americans Traumatized, psychiatrist.com, 2024)
〔訳例〕研究チームは、感情的分極化の度合いが高い回答者は、低い回答者に比べて、選挙関連のPTSD症状を訴えることが有意に多いことを明らかにしました。
〔解説〕
affective polarization: 感情的分極化
選挙が個人に心理的な負担を与える背景には「心の分断」、すなわち、感情的分極化(affective polarization)の存在があります。これは、対立する党派や意見に対して極端な否定的感情を抱く現象を指し、「私たち vs. 彼ら」という対立構造を生み出します。この分極化が進むことで、社会全体に不寛容な態度が広がり、選挙の結果が個人の心理に与える影響が増幅します。
Election-Related PTSD Symptoms: 選挙関連PTSD症状
選挙結果に関連するPTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状。研究によれば、感情的分極化が強い人、つまり対立するグループに対してより強い否定的感情を抱く人ほど、選挙後にPTSD症状を報告する可能性が高いことが示されています。
道徳的負傷(moral injury)とPTSD
〔今回のフレーズその2〕
This social rift added to this ‘moral injury’ — distress experienced when exposed to beliefs or actions contradicting one’s core values — which researchers noted as a predictor of PTSD.
(Denis Storey, Post-2020 Election Partisan Hostility Left Americans Traumatized, psychiatrist.com, 2024)
〔訳例〕
この社会的分断は、「道徳的負傷」―すなわち、自分の中核的価値観に反する信念や行動に直面したときに生じる苦痛―をさらに悪化させるものであり、研究者たちはこれがPTSDの予測因子となり得ることを指摘しています。
〔解説〕
moral injury:道徳的負傷(道徳的傷つき)
道徳的負傷(moral injury)とは、自分の良心や根本的な価値観に反する行動や状況に直面した際に感じる心理的な苦痛を指します。この概念は、戦場における兵士の心理的ストレスを説明する際によく用いられてきましたが、近年ではコロナ禍での医療従事者の精神的負担や、選挙戦における社会的分断の文脈でも注目されています。
選挙結果やプロセスを通じて感じる道徳的負傷は、罪悪感や怒り、自分や他者を許せない感覚を引き起こします。さらに研究では、この道徳的負傷がPTSDの症状を悪化させるリスク因子である可能性が示されています。選挙が社会的対立を深めるだけでなく、個々人の心理的健康にも深刻な影響を及ぼしている点は見過ごせません。
social rift: 社会的分断、社会的亀裂
riftは岩や雲などにできた「裂け目、亀裂」を意味する単語で、更には、親しい関係のなかにできた「不和、仲たがい」や、特定の意見をめぐっての「対立、軋轢」を表す際などにも使われる表現です。
core values: コアバリュー(中核的価値観)
core valuesとは、人や組織が持つ「根本にある最も重要な価値観や信念」を指します。これらは行動や意思決定の基盤となる基本的な考え方であり、個人にとってはその人の人生において「何が重要か」を決定づける指針となります。一方、企業や組織においては、その文化や存在目的を形成し、長期的な目標や方向性に影響を与えます。
predictor of PTSD: PTSDの予測因子
予測因子(predictor)は、特定の結果や状態(従属変数)を予測するために用いられる要素や変数(predictor variable)を指します。統計学やデータ分析、心理学などの用語として使われる場合は、結果に影響を与える独立変数として扱われることが多いです。道徳的負傷に苦しむ人々は,罪悪感や怒り,そして自分自身や他者を許せない等の痛切な感覚に苛まれます。研究によると、この道徳的負傷がPTSD症状を悪化させるリスク因子となる可能性が示唆されています。
今回は、私たちの生活に直接的にも間接的にも影響を与える重要なイベントである「選挙」に関連して、感情的分極化affective polarization、道徳的負傷moral injury、社会的分断social rift、と言ったキーワードに触れてみました。心理臨床家の道を歩む私たちは、社会の分断を癒し、人々の心に優しさを取り戻す未来を目指して、一歩ずつ学びを積み重ねていきたいですね。
では、次回もまた、心理系大学院受験の英語対策に役立つ実践的でフレッシュな話題をお届けしたいと思います。
【この記事を書いた人】
木村 崇志 ココロアップアカデミー講師 臨床心理士・公認心理師
引用文献
著者: Denis Storey
投稿日:October 31, 2024
記事タイトル:Post-2020 Election Partisan Hostility Left Americans Traumatized
出典:psychiatrist.com https://www.psychiatrist.com/news/post-2020-election-partisan-hostility-left-americans-traumatized/




